合併トピックス

どうなる、どうする合併新法=県知事「勧告」

2005年1月7日付「自治日報」より

 
 「2005
年4月に全国の市町村数は2,500を切る」ー。総務省は昨年暮れ、こんな数値を発表した。政府目標の「市町村数、千」には及ばないものの、 合併特例法の期限切れを控え、合併は急速に進んでいる。  同時に、合併協議会の分裂、さらには議会解散や市町村長の辞任など合併をめぐる騒動も全国各地で急増。「平成の大合併」の嵐が日本国中を吹き荒れている。

 そんな中、今年4月からは、都道府県知事が「勧告」や「あっせん・調停」で市町村合併を進める合併新法がスタートする。総務省は、その「指針」を四月早々にも策定する方針だ。

4月から合併新法施行

 総務省は、「今後も市町村合併は進捗し、さらに市 町村数は減少する」と強気だ。確かに、毎年数件だった市町村合併が、03年には12件、昨年は83件に急増した。05年に入っても1月1日付けで新潟県上越市など21市が誕生。今後も、合併は加速しそうだ。


◆合併協の離脱・分裂も
 しかし、市町村の現場では合併件数に合わせて混乱も拡大している。

 その一例が合併協議会の離脱・解散だ。埼玉県川口市が合併協を離脱、北海道ニセコ町など5町村が合併 協を解散ー連日、各地でこんな動きがある。中には、 栃木県日光市など5市町村兵庫県浜坂町など2町では「合併調印」を終えながら破談≠ニなった事例もある。
 合併協分裂の理由は、様々だ。岩手県関市など9市町村の合併協は新市名をめぐり解散。秋田県能代市など7市町村は新市名を「白神市」と決めたが、三村青森県知事から世界遺
「白神」の″乗っ取り″だ とクレームが付き、分裂の 危機に直面している。

 「新庁舎」の位置をめぐる混乱 は、昭和の大合併で周辺部 がさびれただけに、より深 刻だ。岡山県佐伯町議会は 「役場が和気町に移る」と して合併議案を否決した。

 このため、今年10月に合併予定の大分県「由布市」では、各町役場を新庁舎として存続させ、庄内町には総務、湯布院町には観光などの部局を設置する分散方式を採用する。
 また、住民投票による合併破綻の事例も目立つ。01年7月、埼玉県上尾市が条例に基づく全国初の住民投票を実施し話題を呼んだが、今は、対象を中学生(沖縄県与那国町など)や外国 人(岡山県真備町など)に も拡大して各地で実施され ている。

 同制度は、合併協設置を 議会が否決する事例が増え たため、全国町村会等の反対を押し切って導入したも の。兵庫県八千代町徳島県柚岐町などでは住民投票で「合併賛成」が多数を占め、合併に邁進している。
 一方、北海道中札内村では 「合併反対」が多数を占め 帯広市との合併を断念。しかも、住民投票の結果は重い。「合併反対」が多数を
占めたため、千葉県志賀東金市長や北海道の井沢 ・南幌町長は辞任を表明した。


◆町村再編で合従連衝
 また、「議員特例」をめ ぐる議会解散や合併協解散もある。すでに合併した山梨県南アルプス市(議員95人、法定数30人)や四国中央市(同66人、30人)では「行革の目的に反する」との住民の反発を受けて解散、法定数に戻した。  青森県弘前市など12市町村の合併協では町村議会側 が定数201人(法定数46人)を主張、市が反発して合併協が解散した。同特例は、合併新法でも継続されるが、財政難の中で議員の″権利行使″は一段と厳しくなりそうだ。

  このほか、合併する相手をめぐる混乱も目立つ。和歌山県橋本市など6市町村は合併協を発足させたが、「合併反対」の住民意向調
査を受けて橋本市が離脱 し、合併協も解散。その後、 高野口町と橋本市が新たな合併協を設置。残る4町村も別途、合併協を設置したが、今度ばかつらぎ町が住民アンケート結果を受けて離脱。同町との合併を目指す花園村も続いて離脱。結局、3つの合併協でそれぞれ合併協議を進めることになった。

 香川県観音寺市など一帯5町の法定協は「新市名」 で対立。三市町が新たに合併協を発足、離脱した3町は隣の合併協への参加を申
し入れたが拒否された。ところが、合併を拒否した隣の合併協も分裂、そこから 離脱した仁尾町など二町が3町の合併協に合流して新たに5町で合併協議を進めることになった。


 合併は市町村の再編だ。その「組み合わせ」をめぐる各地の混乱ぶりをみると、戦国時代の「国取り物語」を連想させる。生き残リをかけた合従連衡が、今日も全国各地で展開されている。

 

「アメ」から「ムチ」へ

合併の 「勧告」 注目される県知事の対応

◆知事勧告で合併推進へ
 合併に伴う悲喜こもごもが全国で展開されているが、「自律でゆくか合併すべきか」−。なお滞れ動いている市町村も、4月から新たな事態に直面する。合併新法の施行だ。新法は、総務大臣が策定する「基本指針」を踏まえ、都道府県知事が「構想」をつくり、「勧告」などで合併を進める。
 

 総路省が4月にも策定する「指針」には、合併対象に「人口一万人未満」の小規模町村を明記する。また、都道府県の「構想」には、合併すべき市町村の「組み 合わせ」などを盛り込む。 その上で、知事は「勧告」 で合併協の設置を働きかけ る。さらに、設置されてい る合併協にも合併協議の促進を「勧告」したり、新市名や新庁舎の位置などで揉 めている場合ばあっせん・ 調停を行う。


 
この新法も「自主合併」が前提だが、「勧告」すれば・「公示」され、関係市町村には相当のプレッシャーになるごれまでの″アメ″が″ムチ″に変わった。

 このため、同構想を打ち出した第27次地方制度調査会の答申(03年11月) が出た当時も、都道府県知事からは「一万人未満とか短縮的な考えですべきではない。県は市町村のサポート役で、私は強制するつもリはない」 (寺田・秋田県知事)、「市町村と対等・協力関係の県が合併構想を策定し、あっせん・勧告で進めるのは適当ではない」
(井戸・兵庫県知事)などの批判が相次いだ。


 しかし、合併推進派の藤田広島県知事は、昨年春、合併相手をめぐり混乱が続く宮島町長に対し合併先の早期決定を勧告。また、高橋北海道知事は昨年暮れ、「地元からの気持ちが伝わってくるような場合は、勧告権の発動はあり得る」と述べた。そして、

 千葉県本埜村長からば印西市・印旛村との合併に向けて堂本知事に働きかけを要請する動きも出てきている。


 合併新法が施行される4月以降、各都道府県知事が 構想策定や勧告等にどのような態度で臨むのか注目される。


合併トッピクス 市町村合併の新法案概要判明 2004年1月13日付「読売新聞」夕刊より