門真市 古川橋駅かいわい

幣原首相ゆかりの地

2006年1月16日付「朝日新聞」

        週間まちぶら第69号より

 門真市の京阪古川橋駅は府警察門真運転免許試験場の最寄り駅。免許の取得や更新で1度は立ち寄ったという人も多いだろう。だが、この街に隠れた名所が数あることは、あまり知られていない。

 大阪府出身の首相は、堺市生まれの鈴木貫太郎と門真市出身の韓簾喜重郎だけ。

 喜重郎は1872(明治5)年、現在の古川橋駅近くの豪農の家に生まれた。幣原家の婿養子だった父新治郎は、親類の反対を押して田畑を売り、4人の子たちの教育に力を注いだ。
    
 長男坦(たいら)は国史学者で、台北帝国大初代総長などを歴任。

 外交官になった次男喜重郎は五つの内閣で外相を務めた。1920年代に米英との協調、中国への内政不干渉を唱え「幣原外交」として歴史に名を残した。

 長女操は社会事業家として病院や保育園を開設。

 次女節は女性医師の草分けとなった。


 喜重郎の生家はいまはないが、近くに幣原兄弟顕彰碑が残り、吉田茂元首相の直筆で兄弟の活躍をたたえている。


 関西電力古川橋変電所には、1922(大正11)年に建てられた変電所の建物が現存する。木曽川の水力発電による電力を京阪神に供給する根幹施設で、建物正面の壁には福沢諭吉の娘婿で電力王と呼ば
れた大同電力(関西電力の前身)社長の福沢桃介の漢詩が刻まれている。


 高度成長期に門真市の人口は倍増し、古川橋駅周辺には住宅やアパートが林立した。だが、木造建築群も老朽化が進み、近年はマンションなどへの再開発の動きが進む。
 街の繁栄を願って、01年冬から企業やテナント有志が駅前ロータリーに電飾をともし始めた。明かりの数は年々増え、 この冬も5万個の電飾が1月末まで街を照らす。    

                                (歌野清一郎)

 

 

  
「松下さん」の城下町 西三荘駅かいわい 門真市・守口市 2008年10月12日付「朝日新聞」