「無保険の子」救済開始半年

「窓口交付」の壁

 保険証、進まぬ取得

 2009年10月24日付「毎日新聞」夕刊より

 
  親が国民健康保険(国保)の保険料を滞納し「無保険」となった中学生以下の子どもに短期保険証を一律交付する救済策が導入されて、半年余り。しかし、窓口に呼び出して交付している自治体では、さまざまな理由で保険証を取りに来ることができない世帯も多い。柔軟な対応や、国保の担当課だけでなく各機関が連携した取り組みが必要という指摘が出ている。【青木絵美】

滞納「また怒られる…」親に不安も

 今月22日、大阪府門真市内に住む女性(45)は、中学2年の長女と小学1年の長男に体を支えられて市役所を訪ね、保険証をようやく手にした。夫(46)は運送会社で運転手をしているが、最近は月収20万円を下回る時もあり、昨年11月、年間約46万円の国保料を滞納して「無保険世帯」になった。

 市は翌12月、原則中学生以下の子どもがいる世帯への短期保険証交付を独自に決定。市保険収納課はこの家にも交付を知らせる文書を送ったり、家を訪ねたというが、女性は歩けないほどの足の痛みで玄関に出向くこともできず、郵便物にも気がつかなかった。

 子どもの保険証は欲しかった。今夏、長男が熱性けいれんを起こして救急車で病院に急行した時、医療費の1万7000円を全額請求され、1000円を出すのがやっとだったからだ。

 しかし、今月、市から保険証を受け取りに来るよう書かれた文書が届いたが、足の痛みに加え、過去に市の窓口で納付を厳しく迫られた記憶があり、「また怒られる」と思うと動き出すことができなかった。この日は「無保険の子」を調査する民間団体「大阪社会保障推進協議会」の担当者も付き添い、市役所で職員から保険証を受け取ることができた。「これで支払える」。自己負担分だけで済むようになった今夏の病院での残りの支払いをするつもりだ。

各機関が連携を
  門真市内でこの家庭のように、短期保険証が市役所に留め置かれている18歳以下の子どもは190人(今年8月)。厚生労働省は保険証発行時、事情把握のため接触機会を確保するよう通知しており、寺西和彦・保険収納課長は「一律に郵送すると、事情を聴かせてもらう機会を失うことになる。こちらも休日や夜間も含めて訪ねているが……」と話す。

 大阪市では今年9月、403世帯中252世帯が短期保険証を受け取りに来ていないことが分かり、新型インフルエンザの感染拡大に備えて一律郵送した。三重短大の長友薫輝(まさてる)・准教授(地域医療論)は「保険証が届かない家庭は病気など他の問題も抱えていることが多い。市町村教委や保育所などが実情をつかんでいる可能性もある。連携してほしい」と話している。

大阪社会保障推進協 国保調査に協力を 健康状態など 門真で24、25日 2009年 10月15日付「毎日新聞」より 

  門真国保実態調査

 

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