78市町村が連結赤字
健全化法案基準で日経が試算

  

   2007年6月3日付「日本経済新聞」より

 地方自治体の4%超にあたる78市町村の財政が2005年度に、公営企業などを含む連結ベースで赤字だったことがわかった。

  今国会で審議中の地方財政健全化法案が成立すると、08年度から財政の健全度を測る新たな指標として「連結実質赤字比率」が導入される。

  赤字比率が高いと北海道夕張市のように国の管理下に置かれ、行政サービスの削減など住民生活にも影響が及びかねない。大きな赤字事業を抱える自治体は抜本的な財政再建を迫られそうだ。

 総務省から入手した全自治体・全会計の決算を基に日本経済新聞が連結実質赤字比率を試算した。

  同比率は自治体の連結ベース(第三セクターや地方公社は含まず)の財政赤字額が、教育や福祉など基本的な行政サービスに必要な財政規模(標準財政規模)に占める割合を示す。

  赤字比率が基準を上回る自治体は、国の管理下で再建を進める財政再生団体となる。

 
  総務省は地方自治体が財政再生団体に転落するかどうかの分かれ目となる、連結実質赤字比率の基準を「25%より高くする」(自治財政局幹部) 方針。

 今回の試算では赤字比率が364%の夕張市を筆頭に、10の市町が25%を超えている。
  赤字比率が夕張市に次いで高いのは69%の北海道赤平市(赤字額は32億円)。一般会計に一部の特別会計を加えた普通会計は黒字だが、病院や国民健康保険の大幅な赤字が足を引っぱった。
 総務省は初期投資の負担が重い下水道や病院については赤字額の計算方法を調整する考えだ。ただ大幅な赤字を抱える自治体は赤字事業の採算を改善させるか、他の事業を削って赤字を埋めない限り、財政再生団体になる公算が大きい。

 財政再生団体になると 、行政サービスの大幅削減や増税という形で住民にはね返る。

 国の管理下で再建中の夕張市は、病院を診療所に格下げしたり、高齢者向けのサービスを削減したりした。
 過疎地で病院などが赤字なのは避けがたい側面もあるが、観光事業で十三億円の赤字を抱える山口県秋芳町のような自治体もあり、財政運営の見直しを迫られそうだ。


 個別事業ではバスや地下鉄など交通の赤字が大きい。神戸市のバスと福岡市の地下鉄で赤字が三百億円に達するなど、七自治体の十二事業で赤字が百億円を超えていた。
 赤字事業の数が多いのは老人保健医療で、四百八十五自治体に上った。
 都道府県で連結赤字の団体はなかった。


神野直彦・東京大学大学院教授の話 自治体は赤字だからといって必要な事業までやめるわけにはいかない。一方、観光事業などで行政が手掛ける必要のないものもある。住民は無関心でも結果責任を負う。本当に必要かどうか、あらかじめ意思表示すべきだ。