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合併の是非を問う住民投票条例制定の直接請求を受けての臨時市議会

  
. 直接請求代表者 河原林昌樹 氏の意見陳述



1 はじめに
 現在、門真市と守口市との合併協議が進んでいることはご承知のとおりであります。しかし、合併の是非を市民に問う方法については、これまで十分な議論がないまま合併協議が進んできたという印象があります。このような中で、みずから声を上げなければ自分たちの意思が十分に考慮されないまま合併の是非が決められるのではないかという不安が市民の間で起きてきました。

 こうしたことから、わたくしたちはこの度、「門真市が守口市と合併することの是非を問う住民投票条例」の直接請求をおこなうことにしたのです。今回の直接請求では、有権者の1割を超える市民の皆様から署名をいただくことができました。
 わたくしは、今回の直接請求における直接請求代表者として、署名収集活動に当たるとともに、本請求をおこなった立場から、多数の市民の皆様の賛同を得たわたくしたちの条例案について意見を申し述べるものであります。

2 住民投票の意義
 まず、今回わたくしたちが住民投票条例を直接請求し、合併の是非について住民投票を実施すべきであると考えた理由を申し述べます。


  地方自治における意義
 憲法92条に定める地方自治の本旨については、団体自治と住民自治のふたつの意味を持ったものと一般的に理解されています。

 なかでも住民自治は、地方に関することは住民みずから決めるべきであるとの原則を意味することは皆様ご承知のとおりであります。もっとも、自治のあり方については、議会を通じた間接民主制もあれば、住民投票などの手段を通じて住民みずから決める直接民主制もあります。

 憲法は、国政と異なり、間接民主制を地方自治の原則としているわけではなく、地方自治法では住民みずから議決に参加する町村総会という制度が認められているなど、直接民主制をおこなう余地を認めています。
 「民主主義の誤作動」といって住民投票を敵視するかのような発言をした政治家がいましたが、少なくとも地方に関することについてはこの言葉があてはまる余地はありません。

 直接民主制と間接民主制を比較した場合、政策決定において間接民主制の方が直接民主制よりも適切な選択がなされるという保障はありません。直接民主制を採用するか、間接民主制を採用するかは、せんじ詰めればコストの問題にすぎません。

 しかし地方に関する数ある問題の中でも合併問題は、他の政策課題と異なり、あえてコストをかけてでも直接民主制を通じて決めるべき事柄であるといえます。


 合併問題における意義
 現在協議されている門真市と守口市の合併が実現すれば、門真市は自治体として消滅することになります。多くの市民はこの門真市に強い愛着を抱き、その発展を願っています。にもかかわらず合併により門真市が消滅することになれば、市民の地元自治体への愛着や帰属意識に少なからぬ影響を与えることになります。


 市町村は、地方自治における基礎的自治体であり、市民の地域への帰属意識や市民相互の連帯意識を基礎として成り立っています。このような市民の帰属意識や連帯意識は、永年にわたって形づくられてきた地域の歴史や伝統の中で培われるものです。

 しかし自治体の合併は、伝統的な市の名前や町名が消えることに象徴されるように、歴史や伝統が失われ、地域社会のあり方にも大きな変化をもたらす可能性があります。また、これにともなって、市民の帰属意識や連帯意識も少なからず影響を受けることになります。


 合併は、地域社会のあり方に影響を及ぼすだけでなく、これまで市民が享受してきた行政サービスの質や量にも変化をもたらす可能性があります。「サービスは高い方に、負担は低い方に」というのは、市町村合併を推進するためのスローガンですが、実際には、このスローガンのように住民にとって好都合な合併の例は多くないと聞いています。


 平成の大合併は、構造改革の一環として、悪化する自治体財政の建て直しを目的として推進されてきました。他方で、国と地方の権限や財源のあり方をめぐって、三位一体の改革といわれる論議が現在すすめられています。今後、自治体にどのような税源が移譲され、地方交付税制度がどのように改革されることになるのかは依然予断を許さない状況にあります。このような近い将来における自治体のあり方さえ不透明な状況の中でおこなわれようとしている合併については、市民の賛否を問う必要があるはずです。


 このように合併は、自治体の境界を変更するだけにとどまらない、大きな影響を地域社会や市民生活に与えることになります。この合併問題の重大性からすれば、合併の是非について住民投票を通じて市民の意向を聞くことは至極当然のことと思われます。

3 条例案の特徴
 次に、わたくしたちが制定を求めている「門真市が守口市と合併することの是非を問う住民投票条例」の特徴について申し述べます。


 まず、第1条で、住民投票の実施時期を新市建設計画の策定後としている点であります。市民がみずから合併の是非を判断するという住民投票の趣旨からするならば、その実施にあたっては、合併後の新市の姿が市民に示されていなければならないはずです。

 合併によって教育や福祉サービスはどうなるのか、あるいはねらい通りに合併によって財政は良くなる見通しがあるのか、こういった合併後の新市の姿について市民は高い関心を持っています。新市建設計画においては、市民生活に密接にかかわる行財政分野を含めて、合併後の新市の全体像が示されることになります。

 市民は、新市建設計画によってはじめて新市の姿を知ることができるわけですから、新市建設計画が示された後でなければ市民が確信をもって合併の是非を判断することができないことはむしろ当然のことと言えます。第1条はこの当たり前のことを示したものです。


 もっとも市民が合併の是非を判断するうえで必要な情報は新市建設計画に限られるわけではありません。例えば、合併せずに自立の道を選択した場合の行財政の見通しなどは、市民が合併の是非を判断するうえで不可欠の情報であるといえます。住民投票をおこなうにあたっては、このような市民が合併の是非を判断するうえで必要な情報ができるだけ幅広く提供されることが望ましいことから、市長におかれては市民への情報提供に努めていただきたいとの期待を込めて、その旨を第12条で定めております。


 次に、住民投票に参加できる投票資格者を20歳以上の有権者に限らず、18歳以上の市民及び永住外国人をも含めた点です。

 もし合併が現実のものとなれば、その影響は、合併時にすでに成人に達している有権者のみならず、その時点では未成年の子供たちにも、彼らが成人に達した後の永きにわたって及ぶことになります。

 また、この門真市を定住の地と定めた外国人にも合併の影響が及ぶことは否定できません。合併がこのように将来に向かって長きにわたって広範な影響を地域社会に与えるものであるとするならば、選挙権の有無にかかわりなく、その影響を受けかねないできる限り多くの市民が合併の是非について意思表示できることが望ましいといえます。18歳以上の市民や永住外国人にも投票資格を認めたのは、このような理念を最大限実現しようとしたものです。


 第7条は、投票の方式について定めており、合併に賛成するときは賛成欄に、反対するときは反対欄に、いずれも○を自署するものとしました。これは、選択肢を簡潔な、わかりやすいものにすることで、合併の是非についての市民の判断が端的に示されるようにしたものです。


 第13条は、投票運動について定めており、市民の自由な意思を拘束したり、不当な干渉に及ばない限り、その方法も含めて投票運動は原則として自由なものとしました。合併の是非についての議論が市民の間で多いに沸き起こることを期待してのことです。


 最後に、第16条で市長やその他の執行機関が住民投票の結果を尊重すべきものとした点です。

 住民投票の結果が市長や議会の判断権を法的に拘束することは法令違反になると従来から言われてきました。しかし、地方自治においては間接民主制がかならずしも本則とはいえないのであれば、住民投票の結果が政策形成に影響を及ぼすことがあったとしても、それは住民自治の原則に適ったものとして高く評価されこそすれ、違法のそしりを受けなければならないものとは考えられません。  むしろ住民投票の結果がそれなりの重みをもって市長や議会に受け止められなければ、住民投票の存在意義自体が失われることになりかねません。住民自治の原則からすれば、このような事態こそ不健全であるというべきです。第16条は、住民自治の原則から導かれるあたり前の考え方を明文化したものにすぎません。

4 50%条項の問題点
  われわれよりも先行して直接請求がなされ、すでに議会で議決された守口市の住民投票条例では、投票率が50パーセントを下回ったときは、住民投票が成立しないものとし、この場合には開票しないという規定が設けられました。
 わたくしは、住民投票の成立要件に関するこのような条項は必要ないものと考えています。

 その理由として第一に、わが国では、国政選挙はもちろん地方選挙においても、一定の投票率がその成立要件とはされておらず、たとえ投票率が低くても得票率が一番大きい候補者が当選するという相対多数の原則が貫かれているということです。ここ数回の門真市長選挙の投票率はいずれも50パーセントを下回っていますが、その選挙結果は市民の意思として厳粛に受け止められています。


 第二に、一定の投票率を住民投票の成立要件とすることは、住民投票に反対する市民にボイコットの権利を認めることになってしまう点です。

 合併の是非のように、二者択一の問題については、住民投票こそが市民の賛否を問う最も有効かつ公正な方法といえます。もちろん住民投票は、投票率が高ければ高い程市民の意向をより正確に示すものになるといえますが、投票率が50パーセントを下回った途端に、その信頼性が損なわれるわけではありません。にもかかわらず一定の投票率を住民投票の成立要件とすることは、市民に棄権の自由を超えて、ボイコットの権利まで認めることになり、住民投票の存在意義を否定するものとなりかねません。


  このような観点から50パーセントを超える投票率を住民投票の成立要件とすることには賛同できないことを申し述べさせていただきます。

5 門真市における住民投票の意義
  門真市では、平成12年12月に、4回目となる門真市第4次総合計画「いきいきかどま2010」が策定されております。そこでは、未来の門真の都市像を「ゆたかな暮らしをはぐくむ生活・産業創造都市 門真」と銘打っています。そして、この計画を推進するための基本姿勢として、市民との協働によるまちづくりということが最も強調されております。守口市との合併が実現すれば、この計画も見直しを迫られることになりますが、まず何よりも合併の是非については市民との協働が必要ではないでしょうか。


 ここにおられる市長、議員の方々の中で守口市との合併問題を選挙公約に掲げて選挙戦を戦われた方がおられるでしょうか。これまで合併問題について市民がみずからの意思を表明する機会が一度も保障されてこなかったことを考えれば、守口市との合併の是非についての判断を市民が市長や議員の方々に委ねたものとは到底みることはできません。


 現に、過去の歴史を振り返ってみても、守口市との合併問題はこれまで何度も検討課題にのぼってきました。その都度、利害得失が冷静に検討された結果、これまでは合併構想は立ち消えになってきました。

 なかでも昭和26年には、当時の門真町において、守口市との合併問題について住民投票がおこなわれ、反対票が過半数を超えたため、合併は白紙に戻されています。このように、ここ門真でも合併という重大な問題について住民投票という方法で市民の意思を問うた経験があります。


 この度の守口市との合併協議は、これまでにない規模とスピードで進められており、将来に禍根を残さないためにも、住民投票によって合併の是非について市民の意思を問うことは不可欠なものといえます。このことは住民代表である議員の方々には申し上げるまでもなく、十分ご理解を得ているものと存じますが、改めて住民投票の意義とその必要性を最後に強調し、原案どおり可決していただくことを期待して、わたくしの意見陳述を終わらせていただきます。


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